出会いの循環をつくるーまちまるしぇ実行委員会 北口さん

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松原市観光協会・編集長 真本

「生まれも育ちも羽曳野市です」

そう静かに語る北口代表は、いまや南河内を代表するマルシェ文化の仕掛け人である。一度は地元を離れたが、結婚を機に羽曳野へ戻った。現在は会社員として働きながら、「まちまるしぇ」(https://machimarche.jimdofree.com/)を軸に地域活動を続けている。

「まちまるしぇ」は、日本遺産「竹内街道」と世界遺産「百舌鳥・古市古墳群」を有する羽曳野市で開催されている地域最大級のマーケットだ。ハンドメイド雑貨、フード、野菜、古道具、植物、子どもも楽しめるワークショップ店舗など約100店舗が集う。

「正解より、納得」

北口代表が何より大切にしている言葉だ。

自分たちが心から「これでいいのだ」と思えるかどうか。それが判断基準だという。

イベント後、彼は「成功でした」とは言わない。

「自分が納得できるか。来場者や出展者が納得できるか。それが一番大事」

第1回目のマルシェは、大きなトラブルもなく終わった。そこで次に挑戦したのは、野外開催だった。

当時、羽曳野市民が公園を借りてイベントを行う前例はなかった。
市議会議員とのつながりもあり、「いずれは地域活性につなげたい。古墳も発信したい」と直談判した。その結果、「翠鳥園遺跡公園」での開催が実現する。

しかし順風満帆ではない。ホームページに「誰もが楽しめるイベント」と書いたとき、問い合わせが届いた。

「全員ではない。迷惑と思う人もいます」

その言葉に、はっとしたという。

「迷惑だと思う人もいる。その前提に立って、自分が納得できるかを考えるようになりました」

予期せぬトラブルから学び、成長してきた。

「終えるなら、トラブルなく終えたい。でも、トラブルがあったから今がある」

その積み重ねが、現在の100店舗が集うイベントへとつながっている。

手作りは安い?

価値観を問い直す「まちまるしぇ」

「地域によって、手作り品への価値観が全然違ったんです」

結婚を機に、妻がアクセサリー制作を始めた。自身も革小物をつくるようになり、各地のマーケットへ出店した。

ある地域では、革小物を見た客がこう言った。

「最近、100均でも売ってるよね」

別の地域では、

「セレクトショップみたいですね」

反応は真逆だった。

「手作りだから安い、ではない。手作りだから高いと思ってもらいたい」

その思いから、「価値観を変えるイベントをこのエリアでもやりたい」と妻も考えた。

Re-lifestyle marche

昭和の時代には、近所付き合いがあった。
モノを大切に使い、添加物の少ない食を選ぶ暮らし。

「昔の生活スタイルに、もう一度目を向けてみませんか」

そうして生まれたコンセプトが、Re-lifestyle marche。

「ただのマルシェではなく、暮らしを再編集する場所にしたい」

第1回目には、お茶屋、文具店、紙の専門店にも声をかけた。
“買う”だけで終わらない関係づくり。
それがミッションだという。

続けるか、終えるか主催夫婦は考える

100店舗規模へと拡大した転機は、公園の変更だった。

「翠鳥園遺跡公園」から「峰塚公園」へ。

規模は拡大したが、それ以上に大きかったのは“当事者”の存在だった。

「出店者さんやスタッフが、まちまるしぇを好きになってくれた」

18回目で終了も検討した。

「羽曳野市でイベントというカルチャーは作れた。やり切ったと思いました」

心のバリアフリーをテーマに、元ブルーハーツのドラマーを招いた音楽交流イベントも実施。クレームなく終えた。

「ピークだな、と」

夫婦の意見も合致した。

だが、ある人物を思い出す。堺市の『SPINNING MILL』オーナーで写真家の小野晃蔵氏。

「この人なら、きっと『やめるな』と言うだろうな」

「一緒にやらかそう」

挑戦するから失敗がある。その言葉が背中を押した。

羽曳野というポテンシャル

「大きすぎず、小さすぎず、ちょうど良い町」

川も山もある。世界遺産と日本遺産を持つまち。ダルビッシュ有投手がスポーツ・観光大使を務めるまち。

食も強い。いちじくもある。

現在は「はびきのまちづくりプロジェクト」にも関わる。
スコットランドのタータン登記所に登録された「はびきのタータン」。

「デザインから、羽曳野市のシンボルを作る」

民間主導の挑戦が動き始めている。

優しさは、循環する

「こんなこと、やっていいんだ。できるんだ」

公園イベントの前例をつくったことが、まちに小さな自信を生んだ。

そして今、彼が語るキーワードは「やさしさ」だ。

「まちまるしぇは、人の優しさから作られたイベントです」

人に手を貸すこと。
ゴミを拾うこと。
小さな配慮。

「少しの優しさが、まちの空気を変えると思っています」

駅前の無断駐輪問題にも向き合っている。制度だけでは解決しない。一人ひとりの意識が問われている。

「いい街にするために、あなたは何をしていますか」

その問いは、静かだが強い。

10年後へ

「主催は、バトンタッチしたいですね」

そう笑う。派手さも規模も求めない。

「まちまるしぇの空間が好き、と言ってもらえたら十分」

目立たなくていい。主役は出展者と来場者。

「細かい連絡をしよう」

それが後継者へのメッセージだという。

出会いは偶然かもしれない。だが、循環はつくることができる。

北口代表は、今日も、まちの空気をやわらかくしている。

Writer

松原市観光協会・編集長 真本

松原市観光協会・編集長 真本

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