「できる人が、無理なくつながる」から始まったまちの居場所づくり — まつばらわーくす伊藤さん
松原市を拠点に、親子ワークショップやハンドメイドイベント、福祉につながる活動まで幅広く展開している市民団体「まつばらわーくす」。その中心で人と人をつなぎ続けているのが、代表の伊藤さんだ。
活動の原点には、看護師として働いた経験、PTAでの13年間、そして子育ての現場で見てきた「孤立」があった。
「松原には、来るまでほとんど縁がなかった」
「私は大阪の平野出身です。高校卒業後、働きながら専門学校に通って、准看護師の資格を取りました。手術室で12年間勤務していました」
医療の現場で経験を積んだのち、結婚を機に退職。夫の家族が松原出身だったことから、このまちへ移り住んだ。
「松原は、来るまでは正直あまりイメージがありませんでした」
長女の出産、そして3年後に長男が誕生。専業主婦としての子育て生活が始まった。
「何かしたい気持ちはあったんですが、子育てしながら外で働くのは難しかった」
転機は、幼稚園でのPTA活動だった。
「PTAは、できる人が無理なくすればいい」
「娘が幼稚園のときにPTAを始めて、それから13年続けました。そこで人とのつながりの基礎ができたと思っています」
伊藤さんは、幼稚園でPTA会長も務めた。
「人をまとめることはもともと好きでした。子どものためにもなるし、地域のためにもなる活動でした」
特に印象的だったのは、中学校PTAの改革だ。
「昔は役員が70人くらいいたんです。先生からは『それだけいないと回らない』と言われていましたが、逆に多すぎると“誰かがやるだろう”になる」
そこで体制を再編。本部役員を10名に絞り、あとは“できる人が関わる委員制”へと変更した。
「“できる人が無理なくするPTA活動”に変えました。先生方も協力的でした」
PTA新聞では先生へのインタビュー企画も実施。
「“教頭先生って何しているんですか”という特集もしました」
この経験が、今の活動の原型になっている。
「やりたい人の、やり始めを作ってあげたい」
ハンドメイドが好きだった伊藤さんは、小さなワークショップやイベントを少しずつ開催していった。
「イベントに出るうちに友達も増えて、こじんまりした会を続けていました」
東日本大震災の際には、チャリティー企画も実施。
「青がシンボルカラーなので、青いハンドメイド作品を作ってもらって販売し、寄付する活動を2年ほど続けました」
活動を続ける中で、強く感じるようになったことがある。
「みなさん、何かしたい気持ちはある。でも、きっかけがないんです」
だからこそ必要なのは「始める場所」だという。
「やりたい人の“やり始め”を作ってあげたい。それが今の活動の軸です」
「まつばらわーくす」は、つながりの土台
2025年4月、市民団体「まつばらわーくす」を立ち上げた。スタートは20名。現在は約90名が登録している。
「営利目的ではなく、松原を中心にした市民活動の場です。ワークショップ活動が多かったので“わーくす”という名前にしました」

発達障害支援の取り組みも活動の柱のひとつだ。
「自閉症啓発デーの助成金をきっかけに、言語聴覚士の先生にミニ講座をしていただきました。親御さんが安心して集まれる会を定期的に開いています」
子育て支援サポーターとしての経験も大きい。
「輪に入れない子や特性のある子と出会いました。まず周りが理解することが大切だと思ったんです」
「居場所は、ひとつじゃなくていい」
イベントづくりで最も大切にしていることを聞くと、即答だった。
「安心できる場であることです。強引な勧誘はしません」
もうひとつ重視しているのが、出展者同士の関係性だ。
「出る人同士がつながってほしい。“知り合えてよかった”から次が生まれるんです」
伊藤さんは「居場所」をこう定義する。
「ひとつの場所だけだと、そこでうまくいかないとしんどくなる。だから、いくつもあったらいい」
実際、不登校支援の居場所づくりの相談も増えているという。
「この人いいな、と思ったらすぐ連絡します」
伊藤さんの強みは、圧倒的な“つなぐ力”だ。
「紹介する以上、その人となりをちゃんと知らないといけない。まずは相手を知ることを大切にしています」
依頼が来ると、自然と顔が浮かぶ。
「常に頭の中で人と人がつながっています」
気になった人にはすぐ連絡する。
「“この人いいな”と思ったら、すぐLINEします」
「福祉を、もっと身近なものにしたい」
今後のテーマは「福祉」だという。
「障害のある方も、高齢の方も、誰もがその人らしく生きられる活動をしたい」
松原から南河内全域へ。活動の輪を広げていく予定だ。
「居場所が増えれば、助かる人が増えます」
最後に、地域の人へのメッセージを聞いた。
「趣味レベルでもいいんです。編み物でも、腹話術でも」
介護や子育てで家にいる人にも、外との接点を持ってほしいという。
「少しだけでも“自分の時間”を持ってほしい。そのきっかけがまつばらわーくすであればうれしいです」
活動情報はInstagram(https://www.instagram.com/matsubarawaworks/?hl=ja)で発信中。年に一度の全体発表会も開催している。
「まずは気軽にのぞいてみてください」
人と人をつなぐことで、まちの景色は変わっていく。伊藤さんの活動は、その実践そのものだ。
Writer
松原市観光協会・編集長 真本
