羽化の瞬間を捉える──写真家・広谷氏が見つめる“狭間”の世界

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松原市観光協会・編集長 真本

この度、松原や南河内地域で活動する方を取材する、「人」にフォーカスした特設ページを公開しました。

今回は「松原・南河内にゆかりのある方」をテーマに、松原ご出身で現在は写真家としてご活躍されている広谷氏のインタビュー記事をお送りします。

大阪で個展を開催

東京と大阪、二つの都市を巡回する写真展『羽化、環の狭間にたゆたう』。
光が揺らぎ、影が息づき、偶然と必然が入り混じるその世界は、静かでありながら力強い生命力を帯びている。

写真家・広谷氏は、この展示に至る背景をこう語る。

「撮影していたとき、光の形が蝶の羽ばたきのように見えたんです。そこから『羽化』というテーマが浮かびました」
「生と死、偶然と必然。その狭間にこそ、命の気配が宿ると思ったんです」

本展は、広谷氏の創作の核心を提示する試みである。

<個展の詳細はこちら>
https://nij.nikon.com/activity/exhibition/thegallery/events/2025/20251118_tgt.html?srsltid=AfmBOoqZbkLoLmZDJAxpmc92cJmnoEFj5HUG8wlcTHRDhpHQGG4bBeGs

松原に育まれた“人の温度”

松原市で23歳まで過ごした日々は、今も同氏の表現の基層にある。

「団地で暮らし、田んぼに囲まれ、友達や地域とのつながりが自然とあったんです」
「街の景色は変わっても、人の温かさは変わらない。その感覚は作品にも影響しています」

故郷の温度が、写真に宿る“やわらかさ”を支えている。

写真との出会い──偶然が導いた必然

広谷氏が写真の世界に足を踏み入れたのは、一本のNikonのCMがきっかけであった。

「趣味を見つけたくてカメラを買ったのが始まりでした」
「長崎に移り住んでから仲間ができて、写真が人と人をつなぐ力を持つと知りました」

その後、大阪に戻って一般企業に就職したが、組織に縛られる感覚に違和感を抱く。

「インドのバラナシで生と死が当たり前のように交錯する世界を目の当たりし、さらに自由に生きようと思いました。そこからより写真に没頭するようになり、独立することを決めました」

フリーになった後、Instagramに投稿していた作品が、雑誌GENICやNikonの目に留まる。

「そこから好きで続けていた写真が、誰かに良い影響を与えているのだと感じることができました」

偶然は、必然のような形で彼の人生を大きく動かした。

<広谷氏 Instagram>
https://www.instagram.com/00.uro/

“狭間”を視覚化するという挑戦

今回の個展の一部エリアでは、二枚一組で作品を展示している。

「二枚の写真が対話するように並べています。解釈の余白を残したかったんです」
「どれが偶然で必然か、観る人の感性で受け止めてほしい」

光、影、風──日常に潜む瞬間を独自の感性ですくい上げている。

「日常の中に『あ、これだ』という瞬間があります。光が命を吹き込むような、あの一瞬を写したいんです」

展示空間は音楽や照明までデザインされ、子どもでも大人でも楽しめる“温度のあるアート空間”として作りこまれている。

<個展の詳細はこちら>
https://nij.nikon.com/activity/exhibition/thegallery/events/2025/20251118_tgt.html?srsltid=AfmBOoqZbkLoLmZDJAxpmc92cJmnoEFj5HUG8wlcTHRDhpHQGG4bBeGs

もう一つの展示室──写真集が生む“触れる体験”

展示と同時に制作した写真集は、和紙や布貼り表紙を用いた特装版。

「ページをめくる動作そのものが体験になるように作りました」
「展示とは違う世界観が詰まっています。ぜひ作品とともに楽しんでほしいです」

写真集は作品を“持ち帰る体験”として設計されている。

日常に宿る美しさを

記事の最後に、彼は静かに語った。

「日常のなかには、必ず美しさの種があるんです」
「その小さな種に気づくきっかけになれば嬉しいですね」

光が羽化し、影がたゆたう──
彼の写真は、見落としがちな“生命の瞬き”をそっと照らし出している。

Writer

松原市観光協会・編集長 真本

松原市観光協会・編集長 真本

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